千代田区 御茶ノ水 神田 小川町の心療内科・精神科 駿河台こころのクリニック 自己流を捨てること

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自己流を捨てること

駿河台こころのクリニックのブログ

自己流を捨てること

2015年03月14日

こんにちは。

今日も、アルコール依存症について書いてみます。

アルコール依存症の治療は、通院、抗酒剤、自助グループを3本柱として行われます。
自助グループには、断酒会、アルコホーリクス・アノニマス(AA; Alcoholics Anonymous)などがあります。

AAは、飲酒問題の解決を目的として1930年代にアメリカで始まりました。そして、「12のステップ」と呼ばれるプログラムを基本に活動しています。
この12のステップのいくつかをみてみます。

1.私たちはアルコールに対し無力であり、思い通りに生きていけなくなったことを認めた。
2.自分を超えた大きな力が、私たちを健康な心に戻してくれると信じるようになった。
3.私たちの意志と生き方を、自分なりに理解した神の配慮にゆだねる決心をした。

こうしてみていくと、キリスト教的な教えが含まれているのが分かります。
キリスト教の教えとは、我々は罪人であり、全てをイエス・キリストに委ねるというものです。
(信仰の厚い方、間違っていたらお許しください。)
つまり、自分以外のものに委ねるということです。

ところが、日本人にとっては、修業を積み自分の力で苦難を乗り越える、自分で何とかするという考えの方が受け入れられやすいと思います。努力して受験戦争を勝ち抜く、成功を手にする、失敗すればもっと修行を積むということです。そして、人に頼るのは甘えだ、と考えてしまいます。

アルコール依存症の方の考え方も、その傾向があります。
「自分の力で何とかする。酒をやめるかどうかって、結局は自分の意志だろう。今までだって、自分の力でここまでやってきた。仕事も頑張ってきた。人の力は借りないよ。」

患者さんの中には、真面目、頑張り屋、緊張を感じやすいが自分で何とかしてきた、という方は少なくありません。しかも、アルコール依存症、酒がコントロールできないなんて人に知られたくないですから、なおさら自分でどうにかしようと考えます。

AAの12のステップでは、これを戒めています。
自分に従ってきた結果、アルコールがもとで問題を繰り返し、断酒に失敗してきた。自分では、アルコールのコントロールはできない。自分以外の何かに委ねなければならない、ということです。

酒をやめるということは、単に我慢するということではありません。
酒とともに生きてきたそれまでの自分を捨てる、自己流を捨てる、自分ではどうしようもないことを認め、自分を支えようとしてくれる人の意見を受け入れるということです。

今まで、仕事やいろんな辛いことを頑張ってこられたはずですから、自分を捨て白旗をあげるのは悔しいと思います。ですが、酒をやめて、これから待っているだろう楽しくて健康的な生活を送るためには、この決断が不可欠なのです。

医師、あるいは家族にすすめられて、AAや断酒会に参加しても、数回でやめてしまう人がいます。
「参加しろと言われて参加したけどもうやめた。あそこに出ている人は、みんな自分より重症だ。自分は、酒で入院したことはないし軽い方だ。失敗談ばかり話して何になる。」と言います。

数回でも、今まで参加したことのない、参加しようとも思わなかった会合に参加されたことは素晴らしいと思います。ですが、そのような会合や、周囲への不満が出てきたということは、酒のない生活に少しずつ飽きてきている、過去の自己流に戻る危険性が高まっているサインです。

酒にまみれて失われた「自分らしさ」を取り戻すために、是非「自己流を捨てる」決断をしてください。

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☆やっぱバスケにしようかな・・・☆