千代田区 御茶ノ水 神田 小川町の心療内科・精神科 駿河台こころのクリニック 薬物治療について その2

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薬物治療について その2

駿河台こころのクリニックのブログ

薬物治療について その2

2017年10月17日

こんにちは。

前回の続きです。今さらですが、もしかしたら以前も同じようなブログを書いたかも、とちょっと心配になってきましたが、気にせず続けます。

当たり前のことですが、まず大切なのは薬物治療について正確な情報を得ることです。

「精神科 薬物治療」というキーワードでネット検索する、また書店で病気の治療のコーナーに行ってみるなど、たくさん情報があります。しかし、どれが適切な情報なのか分からない。しかも、情報を正確に理解するのは難しいことです。例えば、「多くはAですが、稀にBになることがある」という情報があるとします。これを聞いて、「多分Aだろう」と思う人もいれば、「Bだったらどうしよう」とBのことばかり気になってしまう人もいます。つまり、ある情報が与えられても、その時の状態や捉え方の癖などで、頭に入っていない部分やある部分だけが強く印象付けられることがあります。

いろいろな情報源がありますが、一番良いのは担当医師に相談することだと思います。自分が薬物治療に不安を感じていること、それはどんな不安なのか、他の治療法はないのか、など遠慮なく相談してください。

「薬を飲むのは不安です」

(薬を飲むのは不安なんですね。どんなことが不安ですか?)

「副作用のことです。飲み始めると、頼ってしまってやめられなくなるんじゃないかとか、昼間眠くて仕事にならないんじゃないかないかとか」

(薬の依存性や日中の眠気などの副作用のことが気がかりなんですね)

「はい。薬を使わないで治す方法はありますか?」

薬物治療に限らず、担当医師としっかりコミュニケーションをとるということはとても重要です。

 

当院では、まず症状などについて「問診」し、「診断結果」を伝えます。次に、環境調整、気分転換、薬物治療、認知行動療法など「治療方針」ついて説明します。

私自身は、「薬物治療はできるだけ行わない」を原則にしています。

しかし、疾患や状況によっては、薬物治療を行った方が早くそして苦痛を感じずに回復に向かうと考えられる場合もあり、その場合は以下のように治療の必要性について説明しています。

まず、薬物治療がなぜ必要と考えるのか、薬の効果、メリット、副作用とその出現頻度などについて説明します。薬物治療への不安や心配がないかどうかも確認します。そして、薬を使った方が良いと思われる場合でも、不安やその他の理由で薬を使うことへの抵抗感があれば、しばらく薬物治療は行わずそれ以外の治療を試みます。その次以降の受診時に、再度説明しそこから開始する方もたくさんおられます。

薬物治療を行う場合は、治療効果も重要ですが、安全性を特に重視しています。ある薬を(十分量、一定期間)使用しても効果がなければ、中止、変更します。もし何らかの副作用があれば、減薬、変更、中止します。そして、症状が改善すれば減薬、中止します。

「受診された方が自分の家族だったら」と考えながら薬物治療を行っています。

☆今日は寒いしまだ眠たい☆

薬物治療について その1

2017年10月13日

こんにちは。

 

今日は、薬物治療についてお話します。

当院を受診される方の中で、まれに「何か薬を出してもらえますか?」と自ら薬物治療を希望される方もおられますが、「薬はできるだけ使いたくない」と言われる方がほとんどです。

薬への抵抗感のある方が多く、薬は悪者扱いされがちです。

 

食品、化粧品、その他の日用品においては、「自然」「天然成分」「植物由来」「生薬配合」「無添加」といわれるものが身体に負担が少ないというイメージが強く、受け入れられやすい傾向があります。一方で、「合成着色料」「・・・エステル」など化学物質を含んでいると身体に悪いと考えられてしまいます。

また、病気や症状によってもとらえ方が違います。

風邪気味なので風邪薬、頭が痛いので頭痛薬、腰が痛いので湿布を貼る。この場合は、生薬でなく化学物質でも抵抗がなかったり。

しかし、当科で処方される治療薬、眠剤やいわゆる「精神安定剤」などへの抵抗感、不安感は相当なものです。

・やめられなくなるのではないか。(依存性)

・認知症になるになるのではないか。

・体内に蓄積して後遺症が出るのではないか。

・薬を飲む=「自分は病人なんだ」と落ち込んでしまう。

・会社で飲むと変に思われるのではないか。

・薬に頼りたくない。

・家族が飲むなという。など・・・

同じ薬でも、風邪薬とは全く違う扱いになっています。

 

どうしてでしょうか?

1つには、「こころの病」に対する偏見が関係していると思います。「こころの弱さ、甘えている、努力や辛抱が足りない」ことが原因だと考えていたり、「恥ずかしいこと」「周りに申し訳ない」と感じたりする人が少なくありません。これには、「鍛える、修業を積む、努力を重ねる」ことを美徳とする国民性も関係するのかもしれません。

2つ目として、薬に対する知識不足や誤解によるものです。

便利な時代となり、何でもネットで検索するとすぐに答えがみつかるようになりました(これもネットで配信していますが)。しかし、誤った情報もたくさんあります。しかも、専門家でなければそれが正しいのか誤っているのかがわかりません。また、「**という薬を飲んで、副作用が辛かった」という体験談をアップしているものもあります。それを見ると、その薬が恐ろしくなってしまいます。しかし、その体験談が本当であったとしても、その副作用がどのくらいの頻度で起こるのかというところまでは分かりません。

これらのことなどから、当科で扱う治療薬への抵抗感が生じているのではないでしょうか。

 

その2に続きます。

☆僕のおやつは無添加☆

 

「あがり症」克服のために その2 「コンビニでおでんを注文しましょう」

2017年10月06日

こんにちは。

 

前回の続きです。

「あがり症」には暴露療法が有効です。つまり「苦手な場面を避けないようにする」(回避行動をしない)ことです。

会議が苦手なので会議は毎回欠席する、外食が苦手なのでコンビニ弁当を買って帰る、トイレなどで中座する時のことを考えて映画館では通路側に座るなど・・・自分ではいつものスタイルになっているので、あまり意識しないでやっている場合もあります。

「苦手な場面を避ける」ことを繰り返すことによって、苦手意識がどんどん強まっていきます。従って、「苦手な場面を避けない」ことは「あがり症」克服のためには重要なことなのです。

暴露療法とは、苦手な場面に「慣れる」、つまり不安に感じていたけれども、実は「たいしたことではない」ことに気づいていくこと、とらえ方(認知)を変えるための方法です。

慣れるためには、繰り返し挑戦する必要があります。「月に1回の会議」のように、あまり間隔が長いとなかなか「慣れ」が定着しにくいと思います。しかも、最も苦手なものであればなおさらです。

そこで、日常生活の中で他に「避けている」ことがないか考えてみてください。「あがり症」の人の多くは、会議に限らず多くの場面で回避行動をしています。「月に1回の会議」に挑む前に、日常生活の中の苦手なものに挑戦してみてください。

例えば、コンビニです。

コンビニのサイドメニューを注文してみましょう。

ちょうどこの時期は、サイドメニューとして、おでんや肉まんなどが売られています。

今、レジには会計待ちのお客さんが数名並んでいる状況です。自分の会計の順番になりました。この状況で「おでんを注文できますか?」

「後ろに数名並んでいる。早くしろよ。おでん注文しやがって。時間がかかるだろ、って思われるかも知れない」と考え、特に混んでいる時には、おでんが食べたくても我慢していませんか?

しかし、この考えには何の根拠もありません。

確かに急いでいる人は「早くしろ」と考えるかも知れません。しかし、全員ではありません。「前の人、おでん注文したんだ」と気がつくだけで何も思わない人もいます。また、「自分も注文しようかな」と思う人もいるかも知れません。店員は「自分が仕込んだおでんが売れて嬉しい」と思うかもしれません。さらに、「混雑時はサイドメニューの注文は控えてください」と店内に張り紙してある訳ではなく、ルール違反ではありません。

つまり、「混んだコンビニでおでんを注文することは悪いこと」という考えは誤りなのです。

以前、この質問をしたとき「おでんは無理だけど、肉まんなら注文できる。肉まんは手間がかからなそうだから」と答えた方がおられました。

「おでんはダメだけど、肉まんな迷惑がかからない」これが正しいという根拠はどこにもありません。ただ、肉まんの注文の方が不安が少なければ、それからチャレンジしても良いと思います。

このように、苦手意識は根拠のない考え(自動思考)によって作られています。

そして、コンビニなど日常生活の中でも「あがり症」克服のためのトレーニングが可能です。これを繰り返していくうちに、自分が考えていたほど不安になったり恐れたりすることではないことに気づいていきます。

寒い季節になってきました。トレーニングついでにおでんを食べてみてください。

☆おでん食べたいなぁ☆