千代田区 御茶ノ水 神田 小川町の心療内科・精神科 駿河台こころのクリニック 「良い子」は良いこと?

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「良い子」は良いこと?

駿河台こころのクリニックのブログ

「良い子」は良いこと?

2015年02月02日

こんにちは。
このところ、耳を疑うような事件や犯罪についての報道が後を絶ちません。そして、未成年者が関係したものも少なくありません。かつての同級生や、近所の方がインタビューで、「あまり目立たないおとなしいタイプだった」「いつも挨拶をしてくれる、良い子でした」と答えています。
今日は、この「良い子」について考えてみます。

まず、「良い子である」とは自分自身の評価ではなく、他者からの評価によるものだということです。親の立場で我が子をみた時に、「親の言うことをよくきく」「文句やわがままを言わない」「家の手伝いをしてくれる」「学校の成績が良い」と、「良い子」だと思うでしょう。
私は、「良い子」という言葉を聞くたびに、「良い子を演じなければならなかった、良い子にしている必要があった」のではないかと心配してしまいます。

子供は、生まれてから(少なくとも独立するまでは)食事ひとつにしても親に依存してあるいは支配されて生きています。ですから、子供にとって親に認めてもらうこと、良い評価を受けることは、とても大切なことです。
単に躾が厳しいだけでなく、特にDVもある、両親の喧嘩が絶えない、親がアルコール依存症などを抱え経済的、情緒的に不安定であるなど、いわゆる機能不全家庭のなかで育つと、「良い子にしなければ」という気持ちはより強いものになるでしょう。つまり、どんな家庭であれその家庭の「良い子」の評価基準に自分を当てはめ、そこで生きていく方法を身につけようとします。
その結果、常に人目を気にしたり、自分の感情を抑えて人の言いなりになったり、おとなしく、自己表現が苦手になったり、自己主張のために何らかの事件などを起こすなどさまざまなタイプに成長していきます。これらは、「アダルトチルドレン」と呼ばれます。
先ほど、機能不全家庭の極端な例をあげましたが、冷え切った家庭、不安定な親を子供が支えなければならない状況など、一見表立った問題がなさそうにみえる家庭でも、子供は敏感にその環境に適応する方法を探しています。

「良い子」に疲れ果て、当院など心療内科を受診される方も少なくありません。「三つ子の魂百まで」といいます。幼い頃に身についた思考や自己表現のパターンを変えていくのはたいへんなことです。しかし是非、「良い子」であることを捨て、親の期待や評価ではなく自分のための価値観、「自分らしさ」を取り戻して欲しいと思います。

「良い子」にみえますが、毎日いたずらばかりしています。
「良い子」にみえますが、毎日いたずらばかりしています。

寝酒がよいか睡眠薬がよいか・・・

2015年01月28日

こんばんは。
みなさんは、夜はよく眠れているでしょうか?また、眠れない時はどうしたら良いでしょうか?
眠れないからといって飲酒、いわゆる寝酒をする方がいます。そして、「睡眠薬なんて体に良くない。癖になってやめられなくなる。」という方は少なくありません。
眠れないとき、アルコールと睡眠薬、どちらが良いのでしょうか?

不眠には、寝つきが悪い(入眠困難)、途中で目が醒める(中途覚醒)、起きようと思う時間より早く目が覚める(早朝覚醒)、ぐっすり寝た気がしない(熟眠障害)などのタイプがあります。
睡眠薬は、不眠のタイプによって使い分けます。例えば、寝つきが悪いけど、寝ついた後は朝まで眠れる方には、効き目の時間(薬の半減期)が短い薬を使用します。眠気を催すような安定剤(抗不安薬、抗うつ剤など)を睡眠薬として使用する場合もあります。

そこで気になるのは副作用です。主なものとして、翌朝の眠気(持ち越し)、ふらつき、口の渇き、寝ぼけ、急に使用をやめたときの不眠(反跳性不眠)などです。副作用の出方は、人によって異なります。他の病気などで体調が悪い方、ご年配の方などは、慎重に使用する必要があります。
ある程度継続して睡眠薬を使用した場合、依存が形成される場合があります。これは、反跳性不眠や薬の効き目が悪くなり量が増えていく(耐性ができる)ことを指します。この依存性のために、睡眠薬が悪者にされています。
もし依存が形成された場合、薬を急にやめるのではなく、例えば1錠飲んでいる場合はまず半分にしてみるなど徐々に少なくしていくことで、睡眠薬をやめることが可能です。耐性ができた場合は、抗うつ剤など依存性が少ない安定剤を使用することで、睡眠薬の量が増えていくのを抑えることが可能です。

では、アルコールはどうでしょう。
アルコールは、冠婚葬祭さまざまな集まりで振る舞われ、人付き合いには欠かせない身近なものというイメージがあります。しかし、アルコールでは質の悪い睡眠しか得られず、量のコントロールが困難になっていきます。そして、アルコール依存症、肝・膵疾患、心疾患、認知症など全身の臓器障害など数多くの健康問題に発展する可能性があります。(当院HPの「アルコール依存症」の項をご覧ください)

最近、「処方薬依存」が問題となっており、睡眠薬やその他の安定剤の適正使用につとめる必要があります。適正使用するという約束のもとで、「不眠」だけが治療のターゲットであれば、アルコールではなく睡眠薬を選択すべきです。また、依存性あるいは「依存症」を心配しなければならない場合は、睡眠薬よりも依存性の少ない安定剤を用いる方が良いでしょう。

もっとも、アルコールか睡眠薬かを論じる前に、何故眠れないのかについてしっかり見直してみる必要があります。ずっと抱えている悩みが原因で不眠になっているのであれば、その問題に取り組まなければなりません。あるいは、うつ病になっているのかも知れません。アルコールや薬物といった物質的なことではなく、抱えている問題が慢性化していることが依存症の原因になっていることがあるからです。

睡眠は、こころの穏やかさを知るのに最も簡単な方法の1つです。
眠れない日が続くようであれば、是非ご相談ください。

時々寝言を言っています。 いったい、どんな夢をみているのでしょう・・・
時々寝言を言っています。
いったい、どんな夢をみているのでしょう・・・

アナログ人間

2015年01月27日

こんばんは。
音楽がお好きな方はもうお分かりだと思いますが、当院のロゴマークはレコードをモチーフにしています。今日は、音楽について少し書いてみます。
20150127_01

今やCDの売り上げは徐々に低迷し、音楽配信が主流となりつつあります。オンラインで1曲ずつ購入できたいへん便利になりました。さらに、ハイレゾと呼ばれるものは格段に音質が向上しています。
その一方で、最近レコード復権の兆しがあります。昔のレコードが再発されたり、今のアーティストがレコードで新譜を発表したりしています。また、レコードを知らない若者向けに、レコード再生やオーディオセットの組み方などを解説した雑誌をたくさん見かけるようになりました。レコード好きの私にとってはたいへん喜ばしいことです。

レコードは扱いが少し面倒ですが、CDなどにはない良さがたくさんあります。まず音の良さです。CDは、アナログをデジタル信号に変換した時に情報をカットして作られています。そのためか、同じ曲でもレコードとCDを比較すると、レコードで聴いた時の方がリラックスした時の脳波がたくさん現れるようです。
それから、ジャケットです。CDだと薄っぺらい紙切れですし、配信に至っては何もありません。一方、約30cm四方のレコードジャケットは、ひとつの芸術作品のようです。特に、ジャズの名門レーベルであるblue noteには数々の素晴らしい作品が残されています。
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すべてがスマートになった今、たくさんのことが無駄なものとして切り捨てられています。しかし、同時にたくさんの大切なものも切り捨てられているような気がします。
せめて音楽だけでも、あえて手間がかかることを楽しめるようなアナログ人間になってみてはどうでしょうか。