薬物治療について その1
2017年10月13日
こんにちは。
今日は、薬物治療についてお話します。
当院を受診される方の中で、まれに「何か薬を出してもらえますか?」と自ら薬物治療を希望される方もおられますが、「薬はできるだけ使いたくない」と言われる方がほとんどです。
薬への抵抗感のある方が多く、薬は悪者扱いされがちです。
食品、化粧品、その他の日用品においては、「自然」「天然成分」「植物由来」「生薬配合」「無添加」といわれるものが身体に負担が少ないというイメージが強く、受け入れられやすい傾向があります。一方で、「合成着色料」「・・・エステル」など化学物質を含んでいると身体に悪いと考えられてしまいます。
また、病気や症状によってもとらえ方が違います。
風邪気味なので風邪薬、頭が痛いので頭痛薬、腰が痛いので湿布を貼る。この場合は、生薬でなく化学物質でも抵抗がなかったり。
しかし、当科で処方される治療薬、眠剤やいわゆる「精神安定剤」などへの抵抗感、不安感は相当なものです。
・やめられなくなるのではないか。(依存性)
・認知症になるになるのではないか。
・体内に蓄積して後遺症が出るのではないか。
・薬を飲む=「自分は病人なんだ」と落ち込んでしまう。
・会社で飲むと変に思われるのではないか。
・薬に頼りたくない。
・家族が飲むなという。など・・・
同じ薬でも、風邪薬とは全く違う扱いになっています。
どうしてでしょうか?
1つには、「こころの病」に対する偏見が関係していると思います。「こころの弱さ、甘えている、努力や辛抱が足りない」ことが原因だと考えていたり、「恥ずかしいこと」「周りに申し訳ない」と感じたりする人が少なくありません。これには、「鍛える、修業を積む、努力を重ねる」ことを美徳とする国民性も関係するのかもしれません。
2つ目として、薬に対する知識不足や誤解によるものです。
便利な時代となり、何でもネットで検索するとすぐに答えがみつかるようになりました(これもネットで配信していますが)。しかし、誤った情報もたくさんあります。しかも、専門家でなければそれが正しいのか誤っているのかがわかりません。また、「**という薬を飲んで、副作用が辛かった」という体験談をアップしているものもあります。それを見ると、その薬が恐ろしくなってしまいます。しかし、その体験談が本当であったとしても、その副作用がどのくらいの頻度で起こるのかというところまでは分かりません。
これらのことなどから、当科で扱う治療薬への抵抗感が生じているのではないでしょうか。
その2に続きます。
☆僕のおやつは無添加☆
「あがり症」克服のために その2 「コンビニでおでんを注文しましょう」
2017年10月06日
こんにちは。
前回の続きです。
「あがり症」には暴露療法が有効です。つまり「苦手な場面を避けないようにする」(回避行動をしない)ことです。
会議が苦手なので会議は毎回欠席する、外食が苦手なのでコンビニ弁当を買って帰る、トイレなどで中座する時のことを考えて映画館では通路側に座るなど・・・自分ではいつものスタイルになっているので、あまり意識しないでやっている場合もあります。
「苦手な場面を避ける」ことを繰り返すことによって、苦手意識がどんどん強まっていきます。従って、「苦手な場面を避けない」ことは「あがり症」克服のためには重要なことなのです。
暴露療法とは、苦手な場面に「慣れる」、つまり不安に感じていたけれども、実は「たいしたことではない」ことに気づいていくこと、とらえ方(認知)を変えるための方法です。
慣れるためには、繰り返し挑戦する必要があります。「月に1回の会議」のように、あまり間隔が長いとなかなか「慣れ」が定着しにくいと思います。しかも、最も苦手なものであればなおさらです。
そこで、日常生活の中で他に「避けている」ことがないか考えてみてください。「あがり症」の人の多くは、会議に限らず多くの場面で回避行動をしています。「月に1回の会議」に挑む前に、日常生活の中の苦手なものに挑戦してみてください。
例えば、コンビニです。
コンビニのサイドメニューを注文してみましょう。
ちょうどこの時期は、サイドメニューとして、おでんや肉まんなどが売られています。
今、レジには会計待ちのお客さんが数名並んでいる状況です。自分の会計の順番になりました。この状況で「おでんを注文できますか?」
「後ろに数名並んでいる。早くしろよ。おでん注文しやがって。時間がかかるだろ、って思われるかも知れない」と考え、特に混んでいる時には、おでんが食べたくても我慢していませんか?
しかし、この考えには何の根拠もありません。
確かに急いでいる人は「早くしろ」と考えるかも知れません。しかし、全員ではありません。「前の人、おでん注文したんだ」と気がつくだけで何も思わない人もいます。また、「自分も注文しようかな」と思う人もいるかも知れません。店員は「自分が仕込んだおでんが売れて嬉しい」と思うかもしれません。さらに、「混雑時はサイドメニューの注文は控えてください」と店内に張り紙してある訳ではなく、ルール違反ではありません。
つまり、「混んだコンビニでおでんを注文することは悪いこと」という考えは誤りなのです。
以前、この質問をしたとき「おでんは無理だけど、肉まんなら注文できる。肉まんは手間がかからなそうだから」と答えた方がおられました。
「おでんはダメだけど、肉まんな迷惑がかからない」これが正しいという根拠はどこにもありません。ただ、肉まんの注文の方が不安が少なければ、それからチャレンジしても良いと思います。
このように、苦手意識は根拠のない考え(自動思考)によって作られています。
そして、コンビニなど日常生活の中でも「あがり症」克服のためのトレーニングが可能です。これを繰り返していくうちに、自分が考えていたほど不安になったり恐れたりすることではないことに気づいていきます。
寒い季節になってきました。トレーニングついでにおでんを食べてみてください。
☆おでん食べたいなぁ☆
「あがり症」克服のために その1
2017年10月05日
こんにちは。
急に寒くなってきました。寒くなると鍋料理やおでんを食べたくなります。
さて、今日は「あがり症」(社交不安障害)」の話です。何度も登場したと思います。
人前で緊張することを主訴に当院を受診される方はかなり多いです。
このような方は、「人から悪い評価を受けたくない」と考え、「恥をかくのではないか」とということを強く恐れています。
何らかのできごとや人との関わり、自分の行動などに関連して「自動思考」が生まれます。
例えば、
<できごと1> 赤色の洋服を着て会社に行った。
(自動思考)「似合ってない、と思われたらどうしよう」
<できごと2> プレゼンをする。
(自動思考) 「失敗したらどうしよう」など。
自動思考には根拠ありません。ですから、「服のセンスいいね」と褒めてくれるかも知れないのに、「あがり症」の人は、よりによってマイナスの考えを持ってしまいます。その結果、人前での発言、外食、電車に乗るなど人と関わる場面で緊張し、苦手になるのです。
「あがり症」を克服するためには、この自動思考に気づき、修正する必要があります。
治療の概要については当院のHPにも書いていますが、「あがり症」には暴露療法が有効と言われています。
・・・続きは、次回お話します。