千代田区 御茶ノ水 神田 小川町の心療内科・精神科 駿河台こころのクリニック せん妄について

03-3257-5678
せん妄について

駿河台こころのクリニックのブログ

せん妄について

2015年02月12日

こんにちは。
寒い日が続いています。寒いと、朝布団からなかなか出られないものですね。
さて今日は、寝ぼけについてお話します。

私が以前勤務していた総合病院では、この寝ぼけ、すなわち「せん妄」になる方がたくさんおられました。健康に日常生活を送っている方では、せん妄になることは少ないのですが、特にご高齢の方で、入院や手術を受けるような場合にリスクが高くなります。ご自身が入院治療を受ける、あるいはご高齢のご家族やご親戚の入院治療に際して知っておいた方が良いと思います。

せん妄とは、意識障害の1つです。意識レベルとは、意識がしっかりしている、昏睡状態だ、など覚醒し物事を認識できる程度のことです。せん妄は、最も意識レベルの高い意識清明と最も低い昏睡の間の状態です。照明に例えると、照明をつけた状態と消した時の間、薄暗がりの状態がせん妄が起こる意識レベルです。

薄暗がりだと、いろいろなことが起こります。
①見当識障害:時間、場所、人物が分からなくなる。「今日は何日?ここはどこ?あなたは誰?」
②記憶の障害:昔のことは覚えているが、昨夜のことを覚えていない。
③睡眠覚醒リズムの障害:昼間うとうと、夜眠れない。
④幻覚:実際にはない、変なものが見える。
⑤興奮もしくは活動低下:怒りっぽくなったり、暴れたりと興奮状態になることがほとんどですが、うつっぽくぼんやりすることもあります。

発症の仕方は、1日~数日とかなり急速です。入院したその日から、手術が終わってから、何かの薬が始まってから、あるいは変更になってから、といった具合です。
よく、入院してぼけたんじゃないの、認知症になったのではと心配されます。しかし、認知症は徐々に進行し、ある日突然発症することはありません。また、せん妄は原因があり、その原因が取り除かれれば改善します。このあたりが、認知症とせん妄の違いです。

次に、原因やリスクをみてみます。
①高齢であること:70歳以上になると、注意が必要です。
②脳の病気を持っている:脳出血や脳梗塞、認知症などがあると、リスクが高くなります。
③苦痛を感じる状況:痛み、騒音、便秘、室温が高いなど、寝苦しくなる状況です。
④手術:特に、心臓の手術など身体への負担の大きな手術。
⑤全身状態:貧血、低酸素状態、電解質の異常、発熱、脱水、高アンモニア血症など。
⑥薬物:(特にベンゾジアゼピン系)睡眠薬、抗不安薬、ステロイドなど。

治療の原則は、せん妄の原因への対処・治療です。痛みがあれば痛み止めを使用する。寝苦しくならないように環境調整をする。また、昼夜逆転して昼間寝ている方も多く、お見舞いに来られたご家族もそれをみて、ゆっくり休ませようとカーテンを閉め、照明を落としたりする場合があります。しかし、静かにしたり薄暗くするのではなく、昼間外の光をしっかり取り入れ、声かけをしたり、TVをつけるなどして、睡眠のリズムを作るようにします。

先に述べたように、せん妄は原因が取り除かれれば改善します。ところが、がんのいわゆる終末期になると、ほとんどがせん妄状態になります。あるいは、せん妄を通り越してさらに意識レベルが低下することもあります。

せん妄の話しから少しそれますが、もしご家族ががんの終末期などで声かけをして応答がない状態になったとしても、しっかり声かけをしたり、手を握ったり、さすったりを続けていただきたいと思います。
しっかりと伝わっているでしょう・・・

ぐっすり寝てても、お菓子の袋を開けるとすぐ起きます。
ぐっすり寝てても、お菓子の袋を開けるとすぐ起きます。