薬漬けにされる? その1
2015年02月17日
こんにちは。
前回、心療内科・精神科の受診をためらう理由にいくつかあるというお話をしました。
今回は、その続きで「薬漬けにされるのでは?薬がやめられなくなる?」ということについてお話をします。
当科の治療は、精神療法、薬物療法、その他の治療法の大きく3つに分けられます。精神療法は、個人か集団かに分けられ、手法として認知行動療法、精神分析などいくつかのものがあります。その他の治療法には、電気けいれん療法などが含まれます。そして、薬物治療です。
薬物治療には、内服、注射(筋肉、静脈、点滴)、坐薬といういくつかの投与方法があります。内服が難しい場合や特に即効性を期待する場合、注射や坐薬を使用します。当院のようなクリニックの場合は、内服薬の処方が中心です。
疾患の種類や症状の程度によって、薬物治療が第一選択となることがあります。特に、興奮、幻覚(存在しないものを知覚すること)、妄想(訂正不能な誤った考え)などが著しい場合です。このような状態になると、自分や他の人を傷つけたり、事件や事故に巻き込まれたりする可能性が高くなるからです。
一方、不眠、不安などが主な症状で受診された場合、必ずしも薬物治療がすぐに始まるとは限りません。就寝前にコーヒーなどの刺激物を摂取している場合、コーヒーを控えることで不眠が改善することもあります。また、問診するだけで解決の糸口がみつかり、不安症状が治まることも少なくありません。
当院では、薬物治療が必須の状態を除いては、睡眠薬、抗不安薬(いわゆる安定剤の1つ)、抗酒剤(アルコール依存症の治療薬)などの効果、副作用について患者さんに説明したのち、処方を希望するかどうかを最初に確認しています。特に服用が初めての方は、副作用が気になり、不安、抵抗感があるのは当然のことだからです。
そして、不安に思う理由を確認します。「一度飲み始めると、一生やめられなくなるのではないか。認知症になるのではないか」、など誤解があれば説明を繰り返します。また、睡眠薬などは毎日ではなくて、眠れない時だけ頓服として服用する方法もあります、という提案もします。それでも、不安が拭い去れなければ、一旦薬物治療は見送ります。
抗うつ剤など、ある一定の期間決められた量を服用することで、はじめて効果が現れるものもあります。もし、服薬に抵抗感があると、薬を飲んだり飲まなかったりと不規則な服薬になり、十分な治療効果が現れないまま、「せっかく勇気を出して病院に行き、薬を飲んだけど治らない。もう病院には行かない。」と思い込み、さらに症状が悪化する可能性もあります。また、処方薬を貯め込んでしまう危険もあります。
ですから、薬物治療は「服薬した方が良いですよ」という提案と「でも不安。できれば飲みたくない。」という不安や抵抗感、必要性の折り合いがついた時に行われるのが基本です。しかし、先述の興奮、幻覚妄想が著しい場合には、注射薬を使用するなどかなり積極的な治療になることもあります。
さて、これから「薬漬け」について本題に入るところですが、前ふりが長くなり過ぎましたので、続きは次回お話します。