薬物治療について再び その2
2016年08月22日
こんにちは。
前回の続きです。前回は薬の副作用のことなど書きました。
薬を使いたくない理由として、副作用、薬に頼りたくない、学校や職場で飲みにくいなどをよく耳にします。
できるだけ薬を使わない治療方針ですが、病気の種類や状態によっては薬を使わなければならないこともあります。
重度のうつ病でやる気がでない、悲観的になる、自分を責めてしまう、さらに自殺も考えているような場合、抗うつ薬などの薬物治療は必須です。もちろん、気持ちのサポートや環境調整などの精神療法やカウンセリングも不可欠ですが、あまりに重度で混乱している時は、薬物治療と休息が治療の中心となります。薬物治療8から9割、その他の治療1から2割のようなイメージです。
ところが、動悸がして電車に乗れないなどのパニック障害、手洗いや戸締まりの確認を繰り返してしまうといった強迫性障害では、薬物治療だけでなく認知行動療法が必要です。重症度にもよりますが、薬物治療1から2割、認知行動療法などが8から9割でしょう。
ある日、電車でパニックを起こしてから、電車に乗ると動悸がするようになった。外の景色がみえない地下鉄はダメ、事故などで急に止まるのが不安、最初にパニックを起こした○○線、○○駅は絶対ムリ…と言う方がたくさんおられます。
認知症にでもならない限り、パニック発作を起こしたという記憶が残っています。その記憶から電車への恐怖感や不安感が作られますが、記憶をなくす薬はありません。ですから、薬物治療だけで再び電車に乗れるようにするのは困難です。電車に乗るという訓練が必要です。
この訓練(行動療法)の際に、薬物治療を併用します。記憶を消すことはできませんが、不安感を少なくする効果があります。あくまで行動療法が中心的な治療です。
薬に頼りたくない。
薬について正確な情報を持っていない場合や、真面目でがんばり屋な方は、できる限り自分の力で、と考えます。
ですが、主治医から薬についてしっかり説明を受け、薬の力もうまく利用してみてください。
昨年のブログにも書きましたが、足が弱ったからといって散歩をあきらめるより、杖をついてでも外に出た方が良いと思います。
薬は杖のようなものなのです。