嘔吐恐怖について
2017年06月29日
こんにちは。
しばらく更新しないでいるうちに、梅雨に入ってしまいました。
さて今日は「嘔吐恐怖症」についてお話します。
「恐怖症」と呼ばれる疾患として、「対人恐怖症」「高所恐怖症」などがあります。
「嘔吐恐怖症」はそのうちの1つで、「吐くこと(嘔吐)」への恐怖心、つまり「吐いたらどうしよう」という気持ちが強くなるものです。
嘔吐への恐怖は、自宅などでは少なく、人と関わる場面、例えば電車内、職場、飲み会や人ごみなどで強まります。その結果、電車に乗れなくなったり、職場や学校に行くのが怖くなってしまいます。
「吐くこと」は気持ちの良いものではありません。ですから、「吐きたい」と思っている人はないと思います。しかし、嘔吐恐怖症では吐くことを極端に恐れ、その結果日常生活に支障を来してしまいます。
人前で吐いてしまったなど、実際に嘔吐に関わる経験をしたという場合と、何もきっかけがない場合があります。実際に診察をして感じるのは、元々心配性である、あるいは人目を気にする方が多いということです。
人目を気にする、つまり人から悪い評価を受けたくない、恥をかきたくない人にとって、「吐く」ということは最も避けたいと思うことの1つでしょう。滅多に起こらない、しかしインパクトは強い、しかも自分ではコントロールが難しいことなので強い恐怖を感じてしまいます。
では、どのように治していくか。
「嘔吐」とは、本来身体にとって有毒なものを排除しようとする反射です。ですから、どちらかというと嫌なものですが、「自分が思っているほど恐ろしいものではない」、「人間関係を害するようなものではない」という考え方に修正していく必要があります。
吐くことを恐れ、電車に乗らないようにするなどある特定の場所や場面を避けたり、電車に乗る前に食事をとらないなどの行動(回避行動)をしないようにすることが重要です。つまり、苦手としている場面に徐々に慣らしていく(段階暴露)のが有効な治療法です。いずれも、認知行動療法という治療法です。
また、抗不安薬や抗うつ薬などによる薬物治療もあります。しかし、個人的には、薬物治療はあくまでも補助的なもので、認知の修正や段階暴露といった認知行動療法が不可欠だと思います。
一度植え付けられた恐怖感を取り除くのは、少し時間がかかりますが、諦めずに治療に取り組んでいきましょう。
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