千代田区 御茶ノ水 神田 小川町の心療内科・精神科 駿河台こころのクリニック 受診しにくい理由

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受診しにくい理由

駿河台こころのクリニックのブログ

受診しにくい理由

2015年02月16日

こんにちは。

心療内科、精神科という科は、内科や外科など他の診療科に比べて受診するのに抵抗を感じるという方が多いと思います。
その理由として、悩みを知られるのが恥ずかしい、弱い人間と思われるのではないか、誰かに知られるのではないか、と考えてしまうなどがあります。また、薬漬けにされる、薬を飲み始めたらやめられなくなる、という薬への心配があると思います。

まず、単なる悩みとこころの病はどのように区別するのでしょう。
「入学試験はうまくいくだろうか」「上司に叱られて落ち込んでいる」など、悩みは尽きないものです。そして、無事試験に合格した、その後挽回して上司の評価を得たなど、問題解決することができれば悩みが消えます。
もし、問題解決ができなければ、別の方法を探します。第一志望校はあきらめ第二志望校にしたなど。あるいは、他の楽しみをみつけて気分転換をする、誰かに相談する、忘れる、新たな目標をみつけて頑張るなど。
問題が解決しないことが原因で、あるいは結果的に悩みの種がなくなったとしても、悩んでいる間に、不眠、不安、気分の落ち込みなどが出ることがあります。そして、それがどうしても改善せず、体調不良になったり、日常生活に影響したりする場合は、こころの病として考えます。

「怒りのコントロール」について書いた時に、信念についてお話ししました。もし、「人に弱みをみせてはならない」という信念を持っていたら、「悩み=弱み」、だから相談してはいけないと考えてしまうでしょう。しかし、悩みを相談することは弱さでしょうか?
このように考え方を変えることはできないでしょうか。「自分はこの悩みの種に立ち向かっている。逃げたりしない。解決のためにどんな方法だって試したい。だから、人の知恵を借りるんだ」
悩みの種が解決しないのは、問題そのものが原因ではなく、自分自身が信念を決して曲げないところに原因があるのかもしれません。

「頭がおかしい」ということ。
人間は、人や物にレッテルを貼りたがります。「あいつは・・・な奴だ」という具合です。自分の思い通りにいかない、自分の立場を良くするために相手のことを悪く言うなど場面はさまざまです。「あいつは、いつも・・・だ」、という「白か黒か(all or none)」の思考パターンをしている人は、同様の傾向があります。どうせなら、「あいつは、何をさせても決まってる」など良いレッテルを貼ってほしいものです。

以前に比べて、当科の敷居もずいぶん低くなったと思います。
もし悩みごとがあれば、まず家族や友人、同僚に相談すると良いと思います。それでも解決しない、心配をかけたくない、噂になるのではと思う方は、是非お気軽にご相談ください。
次回は、「薬漬け」について考えてみます。

「お菓子くれないかな・・・」という悩み
「お菓子くれないかな・・・」という悩み

ロック少年

2015年02月13日

こんにちは。

先日のブログで、レコード(アナログ)について触れましたが、時折音楽の話題を取り上げて行こうと思います。

私が音楽を本格的に聴くようになったのは中学生の頃でした。従兄がABBAのレコードを貸してくれたのがきっかけです。その後、同級生が「ABBAなんか聴いてないで、これを聴け」とKISSのレコードを貸してくれました。ロック少年の誕生です。KISSが初来日した翌年くらいでした。その後、同窓会で20年ぶりくらいに彼に会った時、「お前に音楽を教えたのはこの俺だ」と豪語していました。まさしくその通りです。

当時CDはまだなく、レコードかカセットテープ、FM放送などを聴くという時代でした。LPレコードは1枚2500円、2枚組だと4000円、A面B面1曲ずつのシングルレコードが600円。海外アーティストの輸入盤を売っている店や、中古レコード店はほんの数軒でした。まだDVDもなく、ビデオテープ。同級生の家にあったビデオデッキが30万円くらい、VHSが良いかベータかという論争がありました。

その頃の小遣いが3000円くらい、月に1枚レコードが買えるかどうかという具合だったので、本当に1枚1枚大切に聴いたものでした。同級生とのレコードの貸し借りもよくやっていました。大きさが30センチ四方なので、通学自転車の前カゴに入らず、ハンドルにぶら下げて持ち運びしていました。借りたレコードのホコリを丁寧に掃除して、カセットに録音して返却する。そして、あのギターがどうだったなどとロック談義をする、というパターンでした。

今のようにインターネットで商品や情報何でも手に入る訳ではなく、「Music Life」という音楽雑誌が唯一の情報源でした。そして、好きなバンドのカラーページがあると、切り抜いて下敷きに入れていました。Music Lifeで勉強し、良さそうなレコードに当たりをつけて買います。月1枚までですから、失敗は許されません。

ある時、YESというイギリスのバンドの「Close To The Edge(危機)」というアルバムが素晴らしいという記事を目にしました。さっそく、デパート(ダイエー)のレコード売り場に行き、それを購入しました。ところが、家に帰ってよく見ると、LPなのに3曲しか入っていませんでした。A面1曲20分くらい、B面10分ずつ2曲です。LPレコードは、片面に約23分、両面合わせて8~10曲収録されているというのが平均的でした。それなのに、3曲しか入っていないというのは、とても損した気分でした。しかも、当時聴いていたハード・ロックではなく、プログレッシブ・ロックで、だらだらした演奏、意味不明の歌詞で、しばらく落ち込んでいました。

YES  Close To The Edge (邦題:「危機」)
YES Close To The Edge (邦題:「危機」)

余談ですが、プログレッシブ・ロックとは、1960年代にロックがいくつかの方向に分化した時にできた1つのジャンルです。ロックに、クラッシック音楽やジャズの要素を取り入れたもので、曲が長尺、複雑な曲展開、高度な演奏技術を備えたものが多くあります。中には、16分の17拍子の間に4分の3拍子が挟まれているなどどうしても乗れない曲もあります。

YESは、今もなお活動を続けているスーパーグループです。「危機」は、ボーカルのJon Andersonが書いた(おそらく)哲学的な歌詞に、最高水準のギター、ドラム、キーボード、ベースによる演奏という、彼らの最高傑作とされています。当時は大嫌いなアルバムでしたが、今となっては愛聴盤の1つとなっています。

最近よく聴いている音楽は、結局のところ昔よく聴いたものだったり、カセットしか持っていなかったものをレコードで買いなおしたりというのがほとんどです。不思議なもので、音楽を聴くと当時の映像や記憶が蘇ってきます。と、こうやって昔を懐かしく思うようになったということは、歳をとったということなんでしょう・・・もはやロック少年ならぬロックおじさん。

KISSもRolling Stonesも、還暦をとっくに過ぎても現役で頑張っています。負けてはいられません・・・

クリニックのスタッフのみなさんからいただきました。 ありがとうございました。
クリニックのスタッフのみなさんからいただきました。
ありがとうございました。

せん妄について

2015年02月12日

こんにちは。
寒い日が続いています。寒いと、朝布団からなかなか出られないものですね。
さて今日は、寝ぼけについてお話します。

私が以前勤務していた総合病院では、この寝ぼけ、すなわち「せん妄」になる方がたくさんおられました。健康に日常生活を送っている方では、せん妄になることは少ないのですが、特にご高齢の方で、入院や手術を受けるような場合にリスクが高くなります。ご自身が入院治療を受ける、あるいはご高齢のご家族やご親戚の入院治療に際して知っておいた方が良いと思います。

せん妄とは、意識障害の1つです。意識レベルとは、意識がしっかりしている、昏睡状態だ、など覚醒し物事を認識できる程度のことです。せん妄は、最も意識レベルの高い意識清明と最も低い昏睡の間の状態です。照明に例えると、照明をつけた状態と消した時の間、薄暗がりの状態がせん妄が起こる意識レベルです。

薄暗がりだと、いろいろなことが起こります。
①見当識障害:時間、場所、人物が分からなくなる。「今日は何日?ここはどこ?あなたは誰?」
②記憶の障害:昔のことは覚えているが、昨夜のことを覚えていない。
③睡眠覚醒リズムの障害:昼間うとうと、夜眠れない。
④幻覚:実際にはない、変なものが見える。
⑤興奮もしくは活動低下:怒りっぽくなったり、暴れたりと興奮状態になることがほとんどですが、うつっぽくぼんやりすることもあります。

発症の仕方は、1日~数日とかなり急速です。入院したその日から、手術が終わってから、何かの薬が始まってから、あるいは変更になってから、といった具合です。
よく、入院してぼけたんじゃないの、認知症になったのではと心配されます。しかし、認知症は徐々に進行し、ある日突然発症することはありません。また、せん妄は原因があり、その原因が取り除かれれば改善します。このあたりが、認知症とせん妄の違いです。

次に、原因やリスクをみてみます。
①高齢であること:70歳以上になると、注意が必要です。
②脳の病気を持っている:脳出血や脳梗塞、認知症などがあると、リスクが高くなります。
③苦痛を感じる状況:痛み、騒音、便秘、室温が高いなど、寝苦しくなる状況です。
④手術:特に、心臓の手術など身体への負担の大きな手術。
⑤全身状態:貧血、低酸素状態、電解質の異常、発熱、脱水、高アンモニア血症など。
⑥薬物:(特にベンゾジアゼピン系)睡眠薬、抗不安薬、ステロイドなど。

治療の原則は、せん妄の原因への対処・治療です。痛みがあれば痛み止めを使用する。寝苦しくならないように環境調整をする。また、昼夜逆転して昼間寝ている方も多く、お見舞いに来られたご家族もそれをみて、ゆっくり休ませようとカーテンを閉め、照明を落としたりする場合があります。しかし、静かにしたり薄暗くするのではなく、昼間外の光をしっかり取り入れ、声かけをしたり、TVをつけるなどして、睡眠のリズムを作るようにします。

先に述べたように、せん妄は原因が取り除かれれば改善します。ところが、がんのいわゆる終末期になると、ほとんどがせん妄状態になります。あるいは、せん妄を通り越してさらに意識レベルが低下することもあります。

せん妄の話しから少しそれますが、もしご家族ががんの終末期などで声かけをして応答がない状態になったとしても、しっかり声かけをしたり、手を握ったり、さすったりを続けていただきたいと思います。
しっかりと伝わっているでしょう・・・

ぐっすり寝てても、お菓子の袋を開けるとすぐ起きます。
ぐっすり寝てても、お菓子の袋を開けるとすぐ起きます。