怒りのコントロールに挑戦(3)
2015年02月07日
こんばんは。
前回、前々回と怒りのコントロールについて書いてきました。そして、以下のような負のサイクルになることを示しました。
〈怒りのサイクル〉
(生育環境やさまざまな経験)→[信念]→(きっかけ)→[(ネガティブな)考え]→[身体が戦闘モード]→[(攻撃的な)行動]→[(悪い)結果]→(信念に影響する経験となる)
今回は、それぞれの段階でサイクルを切り、攻撃的行動に向かわないようにするにはどうしたら良いかについてお話します。
例えば、「人気ラーメン屋さんの行列に、誰かが割り込んだ」という状況で考えてみます。
①信念: 「○○は△であるべきだ」といった、自分の中のルールです。まず、生活の中で怒りを感じた時に、その状況を記録し、振り返り、自分の中にある信念にたどりつけるよう分析してみてください。この例のような状況に遭遇すると、「なんだあいつ。自分は随分前から並んでいるのに」と多くの人が怒りを感じると思います。この時の怒りに関係する信念は、「順番は守るべきだ」「人に迷惑をかけてはいけない」というものです。この信念は、間違いではありませんし、怒りを感じるのは無理もないことです。
もう一度確認ですが、怒りという感情を持つことは自然なことです。そして、ここでの目標は、怒りから攻撃的な行動に発展させないということです。これを再確認したうえで、この例について考えてみます。
もしこの状況で、攻撃的な行動に発展したとしたら、その原因の1つは「順番は守るべきだ」という信念に固執しすぎていたということです。そして、この信念を何とか修正する必要があります。「順番は守らなくてよい」ではなく、例えば「自分の信念を人に強要し過ぎない方がよい、中にはルールを守らない人もいるだろう、人それぞれだ」という考えに修正してみるのです。簡単に言うと、白か黒かという極端な考えを捨て、それ以外のグレーなものも受け入れるということです。長年従ってきたルールの修正には、かなり抵抗があると思います。
②きっかけ: これについては、きっかけを予測することです。常に警戒するのではありませんが、「前に割り込みした人がいたから、今回もそんな人がいるかもね」という具合です。予測することで、怒りの拡大に対し事前に備えるということです。
③考え: きっかけに対する考えのほとんどはネガティブなものです。この例でみると、「どういつつもりだ、馬鹿にしやがって、ふざけるな」など、自分自身、自分が正しいと思っていること、大切にしているものが傷つけられたと感じになります。きっかけ以前に、自分に自信がない方は、被害的になりやすく、怒りを感じやすい傾向があります。
この段階で修正を試みるとすれば、「順番をちゃんと守った方が、気持ちよくラーメンを味わえる」と考えたり、バナナの皮を踏んで転ぶ想像をするなどユーモアを用いても良いでしょう。
③攻撃に備えた身体の変化: 脳から分泌されたアドレナリンの影響で身体が戦闘モードに入ります。これに対しては、深呼吸をする、一服する、音楽を聴くなどの気分転換を試みます。
④行動: 攻撃的な行動からは、マイナスの結果しか生まれません。「相手を殴らないとイライラする」というのは誤りです。もし、「悪いことをする奴は、暴力を振るわれて当然だ」という信念を持っていれば、修正が必要です。常に我慢することが目標ではありません。攻撃的な行動は、自己表現の1つです。別の自己表現を試みます。それは、納得のいかないことに対して、冷静な口調、内容を吟味して、自分の気持ちを伝えます。「みんなちゃんと順番を守っています。一番後ろに並んでください」。怖そうな相手だと、勇気がいる行動ですが・・・
⑤結果: 暴力を振るった結果、友人を失った、警察沙汰になったなどの結果から学ぶ必要があります。
以上です。
「言うは易し」で、長年のパターンを変えるのはたいへんなことです。まずは、誰かとトラブルになった時のことを思い返して、きっかけ、それによって怒りを感じる原因となった信念、それに続く考え、結果を記録し、パターンを分析してみてください。
怒りのコントロールに挑戦(2)
2015年02月06日
こんにちは。
今日は、前回に続き「怒りのコントロール」についてお話します。
前回、自分に起こった出来事は怒りの原因ではなく、単なるきっかけに過ぎない。そのきっかけから、怒りやそれに続く攻撃的な行動に及ぶかどうかに影響するのは「信念」である。そして、怒りを感じやすい人の中には、本来自分に自信が持てず、「自分は馬鹿にされた」などとネガティブに感じてしまう、というお話をしました。
(生育環境やさまざまな経験)→[信念]→(きっかけ)→[(ネガティブな)考え]
今回は、「ネガティブな考え」の次の段階をみていきます。
「自分は馬鹿にされた」というネガティブな考えから、「ああ、やっぱり自分はダメなんだ」とさらに自信を失う方もおられます。しかし、怒りを感じやすい人は、「自分はあいつに傷つけられた」「許さない」と感じます。
ここから、身体が戦闘モードに入ります。脳からアドレナリンなどのホルモンが分泌され、脈拍、血圧などを上げていきます。呼吸が速くなり、筋肉に力が入ります。ライオンに子供を襲われそうになった時の母親ゾウも同じ状態になります。
次に、攻撃的な行動です。「ふざけんな!てめー・・・」という暴言、暴力、物を壊すなど破壊行為に発展します。
そして最後に、悪い結果が待っています。友人を失った、職場で気まずくなった、警察沙汰になった・・・
この結果は、一つの経験として、誤った信念を作る材料となっていきます。例えば、「あいつがあんなことをして俺を馬鹿にしたからなのに、なんで俺が上司に叱られなきゃいけないんだ」「誰も自分のことを分かってくれない」「俺を馬鹿にする奴は絶対に許さない」・・・という具合です。
このように、怒りは負のサイクルを作っています。
(生育環境やさまざまな経験)→[信念]→(きっかけ)→[(ネガティブな)考え]→[身体が戦闘モード]→[(攻撃的な)行動]→[(悪い)結果]→(信念に影響する経験となる)
みなさん、いかがですか? もし最近、自分が怒りを感じ、攻撃的な行動を起こしたという方がおられたら、自分はどのような信念を持って生活し、ある出来事に対しどう感じたか、またその結果から何を学んだのかを考えてみてください。日記をつけたり、ノートに書き出してみると、自分の怒りのパターン、自分でも気づいていなかったような信念に気づくことがあります。
この怒りのサイクルは、どの段階でも修正することができます。次回、それについてお話します。
怒りのコントロールに挑戦(1)
2015年02月05日
こんにちは。
毎日平穏に過ごせると良いのですが、なかなかそうはいかないものですね。
自分は普通にしているつもりでも、職場で上司に理不尽なことを言われたり、道で誰かとすれ違う時にドンとぶつかったり、店で注文したものと違うものが届いたり・・・中には、自分には直接関係ないこと、例えば赤信号なのに道を横断している人をみてイライラする人もいると思います。
今日は、「怒り」のコントロールについて、以前使用していた「怒りのコントロール・トレーニング」というテキストを参考にお話します。
喜怒哀楽というくらいですし、「怒る」ことは正常な感情の1つです。ですが、怒った後にすぐ「攻撃的行動」を起こすのは問題です。攻撃的行動とは、暴言を吐く、暴力を振るう、物を壊すことです。ですから、怒りの感情を持ったとしても、攻撃的行動に移さないようにコントロールをする必要があります。
では、怒りの原因は何でしょうか?
「自分はちゃんとしているのに、あいつがあんなことをするから」と、相手や自分以外の何かの責任と考えることが多いと思います。しかし、同じ状況でも、すべての人が同じ反応をするとは限りません。ひどいことをされても、全く気にしない人も中にはいるのです。同じ出来事、状況に対する反応の違いはどこからくるのでしょうか?
私たちは、親からの教育や現在までに経験したことから、いろいろなことを学習し、信念、つまり自分の価値観のもととなるルールが植えつけられます。例えば、
①人間はみな平等であるべきだ。
②男は強くたくましくなければならない。
③自分は常に人から認められるはずだ。
④問題は、放っておけばそのうち解決するだろう。
⑤みんなルールを守るべきだ。 などです。
自分の中にあるこれらの信念から外れた出来事があると、怒りが生じます。例えば、①を強く思っている人は、コップに注がれたお茶が自分だけ少ないことに怒りを感じ、⑤に強いこだわりを持っている人は、交通ルールを守らない人に腹を立てます。
③のように、誤った信念もありますが、①や⑤などは、特に間違ったものではありません。①のように、皆が平等な暮らしができれば良いと思います。しかし、実際はそうではありませんし、おそらく不可能なことです。このように、間違ってはいないけれども、そのことにとらわれ過ぎると怒りにつながってしまいます。
自分はいろいろなことで怒りを感じやすいという方は、自分に備わった信念を洗い出してみると良いと思います。
また、怒りの感情に続く攻撃的行動は、表現方法の1つであり、また何かを守ろうとする手段の1つという役割があります。自分が不満に感じていることがあると伝えたい、それから、ライオンから身を守るためにゾウが威嚇するように、自分が大切にしているものや弱い部分を攻撃されないように守っているのです。
攻撃的行動が表現方法1つであるとすれば、言葉を用いたコミュニケーション・スキルを身につける必要があります。
さらに、自分の中の何を守ろうとしているのか、について考えてみる必要があります。怒りを感じやすい方の中には、自己評価が低く、自分に自信がないという方も少なくありません。そのような背景があると、何かで少し注意を受けただけで、「自分のことを馬鹿にしているのか」と感じ、怒ってしまいます。自信を失ったのはなぜか、自己評価を下げるような信念を持っていないかということに焦点をあてることも、怒りのコントロールの1つです。
繰り返しになりますが、怒りの感情を持つことは普通のことですが、それに続く攻撃的な行動が問題です。職場や家庭での立場を悪くしたり、それが飲酒の引き金になってしまうことがあるからです。
「あいつがあんなことをするから」「あんなことがなかったら」・・・自分の周囲に怒りの原因があると思いがちです。しかし、それは単なるきっかけに過ぎず、怒りやそれに続く非生産的な行動に発展させるのは、自分の中の信念が大きく影響しているのです。
信念から始まる負の連鎖とその対処については、後日お話します。