千代田区 御茶ノ水 神田 小川町の心療内科・精神科 駿河台こころのクリニック せん妄について

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せん妄について

駿河台こころのクリニックのブログ

せん妄について

2015年02月12日

こんにちは。
寒い日が続いています。寒いと、朝布団からなかなか出られないものですね。
さて今日は、寝ぼけについてお話します。

私が以前勤務していた総合病院では、この寝ぼけ、すなわち「せん妄」になる方がたくさんおられました。健康に日常生活を送っている方では、せん妄になることは少ないのですが、特にご高齢の方で、入院や手術を受けるような場合にリスクが高くなります。ご自身が入院治療を受ける、あるいはご高齢のご家族やご親戚の入院治療に際して知っておいた方が良いと思います。

せん妄とは、意識障害の1つです。意識レベルとは、意識がしっかりしている、昏睡状態だ、など覚醒し物事を認識できる程度のことです。せん妄は、最も意識レベルの高い意識清明と最も低い昏睡の間の状態です。照明に例えると、照明をつけた状態と消した時の間、薄暗がりの状態がせん妄が起こる意識レベルです。

薄暗がりだと、いろいろなことが起こります。
①見当識障害:時間、場所、人物が分からなくなる。「今日は何日?ここはどこ?あなたは誰?」
②記憶の障害:昔のことは覚えているが、昨夜のことを覚えていない。
③睡眠覚醒リズムの障害:昼間うとうと、夜眠れない。
④幻覚:実際にはない、変なものが見える。
⑤興奮もしくは活動低下:怒りっぽくなったり、暴れたりと興奮状態になることがほとんどですが、うつっぽくぼんやりすることもあります。

発症の仕方は、1日~数日とかなり急速です。入院したその日から、手術が終わってから、何かの薬が始まってから、あるいは変更になってから、といった具合です。
よく、入院してぼけたんじゃないの、認知症になったのではと心配されます。しかし、認知症は徐々に進行し、ある日突然発症することはありません。また、せん妄は原因があり、その原因が取り除かれれば改善します。このあたりが、認知症とせん妄の違いです。

次に、原因やリスクをみてみます。
①高齢であること:70歳以上になると、注意が必要です。
②脳の病気を持っている:脳出血や脳梗塞、認知症などがあると、リスクが高くなります。
③苦痛を感じる状況:痛み、騒音、便秘、室温が高いなど、寝苦しくなる状況です。
④手術:特に、心臓の手術など身体への負担の大きな手術。
⑤全身状態:貧血、低酸素状態、電解質の異常、発熱、脱水、高アンモニア血症など。
⑥薬物:(特にベンゾジアゼピン系)睡眠薬、抗不安薬、ステロイドなど。

治療の原則は、せん妄の原因への対処・治療です。痛みがあれば痛み止めを使用する。寝苦しくならないように環境調整をする。また、昼夜逆転して昼間寝ている方も多く、お見舞いに来られたご家族もそれをみて、ゆっくり休ませようとカーテンを閉め、照明を落としたりする場合があります。しかし、静かにしたり薄暗くするのではなく、昼間外の光をしっかり取り入れ、声かけをしたり、TVをつけるなどして、睡眠のリズムを作るようにします。

先に述べたように、せん妄は原因が取り除かれれば改善します。ところが、がんのいわゆる終末期になると、ほとんどがせん妄状態になります。あるいは、せん妄を通り越してさらに意識レベルが低下することもあります。

せん妄の話しから少しそれますが、もしご家族ががんの終末期などで声かけをして応答がない状態になったとしても、しっかり声かけをしたり、手を握ったり、さすったりを続けていただきたいと思います。
しっかりと伝わっているでしょう・・・

ぐっすり寝てても、お菓子の袋を開けるとすぐ起きます。
ぐっすり寝てても、お菓子の袋を開けるとすぐ起きます。

怒りのコントロールに挑戦(3)

2015年02月07日

こんばんは。
前回、前々回と怒りのコントロールについて書いてきました。そして、以下のような負のサイクルになることを示しました。

〈怒りのサイクル〉
(生育環境やさまざまな経験)→[信念]→(きっかけ)→[(ネガティブな)考え]→[身体が戦闘モード]→[(攻撃的な)行動]→[(悪い)結果]→(信念に影響する経験となる)

今回は、それぞれの段階でサイクルを切り、攻撃的行動に向かわないようにするにはどうしたら良いかについてお話します。
例えば、「人気ラーメン屋さんの行列に、誰かが割り込んだ」という状況で考えてみます。

①信念: 「○○は△であるべきだ」といった、自分の中のルールです。まず、生活の中で怒りを感じた時に、その状況を記録し、振り返り、自分の中にある信念にたどりつけるよう分析してみてください。この例のような状況に遭遇すると、「なんだあいつ。自分は随分前から並んでいるのに」と多くの人が怒りを感じると思います。この時の怒りに関係する信念は、「順番は守るべきだ」「人に迷惑をかけてはいけない」というものです。この信念は、間違いではありませんし、怒りを感じるのは無理もないことです。
もう一度確認ですが、怒りという感情を持つことは自然なことです。そして、ここでの目標は、怒りから攻撃的な行動に発展させないということです。これを再確認したうえで、この例について考えてみます。
もしこの状況で、攻撃的な行動に発展したとしたら、その原因の1つは「順番は守るべきだ」という信念に固執しすぎていたということです。そして、この信念を何とか修正する必要があります。「順番は守らなくてよい」ではなく、例えば「自分の信念を人に強要し過ぎない方がよい、中にはルールを守らない人もいるだろう、人それぞれだ」という考えに修正してみるのです。簡単に言うと、白か黒かという極端な考えを捨て、それ以外のグレーなものも受け入れるということです。長年従ってきたルールの修正には、かなり抵抗があると思います。

②きっかけ: これについては、きっかけを予測することです。常に警戒するのではありませんが、「前に割り込みした人がいたから、今回もそんな人がいるかもね」という具合です。予測することで、怒りの拡大に対し事前に備えるということです。

③考え: きっかけに対する考えのほとんどはネガティブなものです。この例でみると、「どういつつもりだ、馬鹿にしやがって、ふざけるな」など、自分自身、自分が正しいと思っていること、大切にしているものが傷つけられたと感じになります。きっかけ以前に、自分に自信がない方は、被害的になりやすく、怒りを感じやすい傾向があります。
この段階で修正を試みるとすれば、「順番をちゃんと守った方が、気持ちよくラーメンを味わえる」と考えたり、バナナの皮を踏んで転ぶ想像をするなどユーモアを用いても良いでしょう。

③攻撃に備えた身体の変化: 脳から分泌されたアドレナリンの影響で身体が戦闘モードに入ります。これに対しては、深呼吸をする、一服する、音楽を聴くなどの気分転換を試みます。

④行動: 攻撃的な行動からは、マイナスの結果しか生まれません。「相手を殴らないとイライラする」というのは誤りです。もし、「悪いことをする奴は、暴力を振るわれて当然だ」という信念を持っていれば、修正が必要です。常に我慢することが目標ではありません。攻撃的な行動は、自己表現の1つです。別の自己表現を試みます。それは、納得のいかないことに対して、冷静な口調、内容を吟味して、自分の気持ちを伝えます。「みんなちゃんと順番を守っています。一番後ろに並んでください」。怖そうな相手だと、勇気がいる行動ですが・・・

⑤結果: 暴力を振るった結果、友人を失った、警察沙汰になったなどの結果から学ぶ必要があります。

以上です。

「言うは易し」で、長年のパターンを変えるのはたいへんなことです。まずは、誰かとトラブルになった時のことを思い返して、きっかけ、それによって怒りを感じる原因となった信念、それに続く考え、結果を記録し、パターンを分析してみてください。

怒りのコントロールに挑戦(2)

2015年02月06日

こんにちは。
今日は、前回に続き「怒りのコントロール」についてお話します。

前回、自分に起こった出来事は怒りの原因ではなく、単なるきっかけに過ぎない。そのきっかけから、怒りやそれに続く攻撃的な行動に及ぶかどうかに影響するのは「信念」である。そして、怒りを感じやすい人の中には、本来自分に自信が持てず、「自分は馬鹿にされた」などとネガティブに感じてしまう、というお話をしました。
(生育環境やさまざまな経験)→[信念]→(きっかけ)→[(ネガティブな)考え]
今回は、「ネガティブな考え」の次の段階をみていきます。

「自分は馬鹿にされた」というネガティブな考えから、「ああ、やっぱり自分はダメなんだ」とさらに自信を失う方もおられます。しかし、怒りを感じやすい人は、「自分はあいつに傷つけられた」「許さない」と感じます。
ここから、身体が戦闘モードに入ります。脳からアドレナリンなどのホルモンが分泌され、脈拍、血圧などを上げていきます。呼吸が速くなり、筋肉に力が入ります。ライオンに子供を襲われそうになった時の母親ゾウも同じ状態になります。

次に、攻撃的な行動です。「ふざけんな!てめー・・・」という暴言、暴力、物を壊すなど破壊行為に発展します。
そして最後に、悪い結果が待っています。友人を失った、職場で気まずくなった、警察沙汰になった・・・
この結果は、一つの経験として、誤った信念を作る材料となっていきます。例えば、「あいつがあんなことをして俺を馬鹿にしたからなのに、なんで俺が上司に叱られなきゃいけないんだ」「誰も自分のことを分かってくれない」「俺を馬鹿にする奴は絶対に許さない」・・・という具合です。

このように、怒りは負のサイクルを作っています。
(生育環境やさまざまな経験)→[信念]→(きっかけ)→[(ネガティブな)考え]→[身体が戦闘モード]→[(攻撃的な)行動]→[(悪い)結果]→(信念に影響する経験となる)

みなさん、いかがですか? もし最近、自分が怒りを感じ、攻撃的な行動を起こしたという方がおられたら、自分はどのような信念を持って生活し、ある出来事に対しどう感じたか、またその結果から何を学んだのかを考えてみてください。日記をつけたり、ノートに書き出してみると、自分の怒りのパターン、自分でも気づいていなかったような信念に気づくことがあります。

この怒りのサイクルは、どの段階でも修正することができます。次回、それについてお話します。

遊び疲れましたzzz
遊び疲れましたzzz